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梶原郁郎(山梨大学)
[キーワード]微分を視る(微分の直観),微分の事例,Δy(体積の増加分)の出どころ,Δy/Δx
本稿は,体積の微分を視る授業内容による教授学習過程の効果を報告している。これは,面積の微分を視る授業(梶原,2017)で学習した直観の思考手続きの応用をH的とした実践である。
本授業内容は「x3」「x(x+1)(x+2)」「5πx5」を取り上げて,体積図を用いた次の思考手続きで微分の直観的理解を目指している。 (1)「x3」のxの延長線上にΔxをとる,(2)その場合,Δy(体積の増加分)は体積図のどこになるかΔyの出どころ), (3)Δxを0に近づけていくとΔy/Δxは最終的にどこに現れ出てくるか。このように頭の中で体積図を操作すれば,「x(x+1)(x+2)」「5πx2」の場合も,瞬間の変化率(微分)を視ることができる。実践の結果,微分の公式の意味理解が欠落している現状(微分の事例がひとつも所有できていない現状)は,面積の微分を視る授業に続けて大きく改善され,事後質問で微分を直観できた生徒は,本授業の事例と類似性の大きい問題((x+1)(x+2) (x+3)),類似性の小さい問題 (4πx3/3)双方で30名(81%)であった。これらの結果を含めて,本授業内容の成果と課題を本稿は報告している。

佐藤誠子(石巻専修大学)
工藤与志文(東北大学)
[キーワード]知識の関連づけ,歴史学習,自己完結的推論,大学生
本研究は,大学生を対象に,歴史に関する知識学習の実態を明らかにするとともに,知識間の関連づけを企図した教授活動が歴史的事象の推論に及ぼす効果について検討するものである。検討にあたり,本研究では「コロンブス問題」を用いた。それは1492年にコロンブスが到着した西インド諸島の位置を尋ねるものであり,コロンブスに関する事実的知識(目的地,航路の方角,発見地等)を関連づけて学習することで解答可能な問題である。事前調査の結果,事実的知識を所有していても西インド諸島をインド亜大陸周辺に特定する者が少なくなく,彼らは問題間の解答の整合性に欠けていたことから,対象者の知識は個別的な状態にあることが推察された。そこで,問題の解決に直接関係する事実的知識だけでなく,その背景的知識を教授することでそれらの知識を関連づける教授活動をおこなった。その結果,コロンブス問題の適切解答が44%から73%に上昇し,歴史的事象の推論に積極的効果を及ぼしたことが示された。ただし,それでもなお西インド諸島の位置を誤ってインドに特定する者が一定数みられた。適切な関連づけを実現するための学習援助のあり方が今後の課題として挙げられた。

 

工藤与志文(東北大学)
[キーワード]小学校理科教科書,教材構成の論理,トゥールミン・モデル,証拠の隠された論証,論点先取の問題
本研究は,小学校理科教科書を対象に,トゥールミンの論証モデルによる「教材構成の論理」の分析を試みたものである。現在使われている教科書のうち,代表的な3種の教科書全学年分を調査し,データから結論を導いて論証している記述部分を抽出したところ,全部で198の論証が特定された。このうち,論拠の記述を伴っていたものは 19例 (9.6%)にすぎず,ほとんどの記述は「論拠の隠された論証」であった。また,データから結論への飛躍は,「上位カテゴリーヘの一般化」「現象と解釈の乖離」「モデルと実物の乖離」の3つのカテゴリーに分類された。これらの結果から,教科書の「教材構成の論理」には欠落があり,学習者がデータから結論への飛躍を埋められない場合,学習に失敗する可能性が高いことが示唆された。また,隠された論拠を「復元」するだけでは,将来学習すべき内容を現在の論証の論拠にするという逆説(教材構成における論点先取の問題)が生じることについても論じられた。さらに,授業改善の観点から,「論点先取の問題」を回避しつつ論証の信頼性を高めるための方策について提案がなされた。