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石島恵美子
〔キーワード〕模擬授業,教員養成課程,初等,家庭科,大学
模擬授業は,教員としての実践的指導力を育成する効果的な指導法である。しかし,大人数の講座で受講者全員に模擬授業づくりを体験させる実践例は少ない。本研究の目的は,多数回の模擬授業を取り入れた大人数の受講者のいる「初等家庭科教育法研究」の指導法を開発し,実践し,その結果から指導法の効果を分析することであった。その結果,模擬授業を多数回取り入れた本講座は,(1)大半の学生の満足度が高かった。(2)模擬授業を参観することにより「授業を受ける小学生の目線」が芽生え,授業作りの視点が増えた。(3)多数回の模擬授業を通して,実施者と参観者が課題を共有し,質の高い模擬授業を実施することができた。(4)計画・立案・実施・評価を伴う協働的な模擬授業づくりと多数回の模擬授業の参観の経験をとおして,家庭科に関する認識度が向上したことが示された。以上の結果から,多数回の模擬授業を取り入れた指導法は,大人数の初等家庭科教育法研究において教育効果が高いことが示された。

小田切歩 ,渡部優貴
〔キーワード〕算数授業,問題解決学習,グループによるディスカッション活動,説明
本研究では,深い学びを促すための算数授業の改善に向けて,グループによるディスカッション活動を採用した従来の「問題解決学習」の効果を,個人の変化に着目して実証的に検討することを目的とした。小学2年生の算数授業において,算数文章題の問題解決過程を,事前課題-授業(問題解決学習または教師による解説)-事後課題のデザインで検討した。分析の結果,グループによるディスカッション活動においては,児童の説明は十分に促進されなかったものの,全体による問題解決においては,授業課題の解法について根拠の明確さの度合いが異なる様々な説明が行われた。これにより,ワークシートの記述において解法に関する児童個人の説明が促され,それが事後課題における問題解決プランの促進につながったことが示された。しかしながら,単元全体の学習内容を関連づけた,より包括的な説明が十分に促進されなかったため,事後課題における正答の促進には至らなかった。以上のことから,算数授業における問題解決学習の改善に向けて,問題解決学習においてグループ活動を採用する意義を再検討する必要性と,児童の学習レベルを把握した授業デザインの重要性が示唆された。

進藤聡彦,麻柄啓一
〔キーワード〕ルール表象,事例表象,ルールと事例の論理構造
ルールを教示された学習者がルール表象を形成した場合でも,そのルールを事例に適用できないことがある。本研究は,ルール表象を形成した学習者には2つのタイプ(タイプ1とタイプ2)があり,タイプ2の者がルールの適用に失敗することを明らかにした。「銅は電気を通す」という事例とともに「金属は電気を通す」というルールを大学生(N=74)に教え,ルール表象を形成したと考えられる対象者(N=39)を抽出した。このうち18名(62%,タイプ1)は,物質Aが金属であることが示された場合,Aの名前を知っていても知らなくても,「Aは電気を通す」という事例表象を成立させることができた。残り11名(38%,タイプ2)は,名前を知っている金属に即しては,それが電気を通すという事例表象を成立させることができたが,名前を知らないものに即しては事例表象を成立させることができなかった。ルール適用課題では,名前を知っている金属に関しては両者間の成績に差はかったが,名前を知らない金属に関してはタイプ2の成績がタイプ1より低かった。以上の結果は,ルールを広い範囲の事例に適用できるためには,その名前の熟知度(既知か未知か)に拘わらず,事例が等しくルールに支配されていることを学習者が把握しているかどうかが重要であることを示す。本論文ではこの把握のことを「ルールと事例の論理構造理解」と名づけた。