コンテンツへスキップ

吉國秀人,山内敏男 ,前田浩伸
〔キーワード〕参勤交代,児童,認識,巻物教材,授業
本研究の目的は,江戸時代の政治の仕組みのひとつとして参勤交代という制度を捉え直し,1.参勤交代に関する児童の認識の実態を明らかにすること,2.江戸時代の大名行列を描いた巻物教材の提示と予想活動を取り入れた授業が児童の認識に及ぼす影響について示唆を得ることである。
2つの小学校で6年生を対象に行われた授業実践が検討された。巻物教材を提示したいずれの実践においても,「大名行列内には,行列のリーダーとしての大名が,ひとり存在していること」の認識は,児童にとって必ずしも自明のことではないことが示された。さらに,大名がひとりだけであるという事実を教示すだけでは不十分であり,大名行列全体を俯瞰的視点から捉え,大名行列を立派に見せようと工夫したのはどうしてかを問える手がかりを得ることの重要性が論じられた。
最後に,教育心理学研究という位置づけから言語陰蔽効果との関わりが考察され,また実践研究という位置づけからは,幕藩体制についての知識が教師(第一著者)に不足しているという課題が指摘された。

工藤与志文,小野康直
〔キーワード〕アクティブ・ラーニング,教職実践演習,大学生
本論文は,「教職実践演習」の実践結果の分析から,アクティブ・ラーニングの成立条件について考察したものである。分析対象となった実践は,平成27年度に実施された東北大学における教職実践演習である。アクティブ・ラーニングの成立については,須長(2010)による“activeness”概念の整理を参考にし,主として学生による演習終了後のレポートや感想文に基づいて分析を行った。その結果,当該実践はアクティブ・ラーニングの成功例として評価しうるものであると判断されるとともに,関連する要因として①課題内容の適切性②班員数と班構成③班員以外からのアイディア摂取④自らによる授業実践⑤成長の確信⑥社会的要求の満足が抽出された。最後に,以上の知見を一般化し,アクティブ・ラーニングの成立条件として,①学習者にとって課題の意義が明確であること②課題解決のための知識・技能の一部を学習者が持っていて,それを使用する自由があること③学習課題は学習者たちが各自の知識・技能を提供し合うことで達成されるものであること④課題解決に向けたサポートが存在することが挙げられた。

小田切歩,渡部優貴
〔キーワード〕協同過程,知識の関連づけ,関連性の検討,一次関数,数理的考察
本研究では,中学校の数学授業での協同過程において,解法の関連性の検討を集団的に行うことによる,知識の関連づけの促進について検討した。事象の変化を一次関数によって捉える根拠の明確化に焦点を当て,一次関数を用いた事象の数理的考察に関する問題解決過程を,事前課題-授業(関連性の検討を行う協同過程,妥当性の検討を行う協同過程,教師による関連性の解説の3クラス)-事後課題のデザインで検討した。分析の結果,2つの協同過程ではともに,妥当性の検討による一次関数的変化の根拠の明確化に関するやりとりと,関連性の検討による変化の割合とグラフの傾きの関連に関するやりとりが,それぞれ自発的に行われ,そのような協同過程において,一次関数的変化を前提としていた生徒が,変化の割合とグラフの傾きを事象に即して解釈して関連づける説明構築が促されることで,事象の変化を一次関数によって捉える根拠を明確化するようになるという変化がみられた。さらに,関連性の検討では,もともと変化の割合やグラフの傾きを解釈できていなかった生徒が,解釈できるようになるという変化もみられ,協同過程における解法の関連性の検討の有効性が示唆された。

小田切歩,渡部優貴
〔キーワード〕協同学習,理解深化,考えの整合化,説明,分数
本研究では,グループでの話し合いの後に全体交流を行う算数授業での協同学習において,児童が正誤両解法の比較と説明を行うことによる,児童個人の理解深化プロセスを検討した。小学2年算数の「分数」の単元において,日常的な知識を活かして解決可能な,分数の和に関する問題解決過程を,事前課題-授業(協同学習)-事後課題のデザインで検討した。分析の結果,グループ活動後に全体交流を行う協同学習について,以下の3点が示された。①協同学習を通じて,分数に関する児童個人の理解が促進される。②協同学習において,児童個人の分数に関する自分の考えが整合化される。③分数の和に関して,児童個人の自分の考えが整合化されることにより,個人の理解が促進される。さらに,各活動における児童の説明の特徴として,グループでの話し合いでは,児童の説明が十分に精緻化されないことがあるものの,その集団的な説明の変化が個人の説明の変化に直接的に影響すること,一方で,全体交流では,教師の支援により児童の説明の精緻化が促されるものの,その集団的な説明の精緻化が個人の説明構築に与える影響は,児童の既有知識により異なる可能性が高いことが示唆された。

梶原郁郎
〔キーワード〕微分を視る(微分の直観),微分の事例,⊿y(面積の増加分)の出どころ,⊿y/⊿x
本稿は,面積の微分を視る授業内容による教授学習過程の効果を報告している。本授業内容では「y=2x」「x2」「(x+1)(x+2)」を取り上げて,面積図を用いた次の思考手続きで微分の直観的理解の保障を指向している。(1)2xの面積図(縦2・横x)において⊿xxの延長線上にとる。(2)その場合,⊿y(面積の増加分)は面積図のどこになるか(⊿yの出どころ)。(3)⊿xを0に近づけていくと,⊿yは最終的にどこになるか。このように頭の中 で面積図を操作すれば,「x2」「(x+1)(x+2)」の場合も同様に,瞬間の増加率(微分)を視ることができる。本授業内容による実践の結果,「2x」「x2」の微分の数式操作はできるが意味理解が欠落している事前質問の状況は大きく改善され,事後質問において微分を直観できた生徒は,授業内容の事例と類似性の大きい「5x」と「x(x+2)」問題において正答者35名(95%)と37名(100%),類似性の小さい「πx2」問題において正答者36名(97%)であった。これらの事前事後質問の結果を含めて,本授業内容による教授学習過程の効果を本稿は報告している。

江川克弘
〔キーワード〕視写,音読,文体の変容,文章カ
複数の研究において,視写による学習は文章力を高めるのに有効な学習方法の1つであると論じられている。しかし,これらの研究においては,学習者が視写による学習を行うことによって,自分で文章を書く際の文体が変容するのかということについては明らかにされていない。
本研究では,文章力に課題のある1人の大学院生が視写を用いた学習方法(視写と音読をセットで行う)を10ヶ月間行うことによって文章力を高めることができるのかについて検証するとともに,書き手の文体の特徴を示す「1文の平均の長さ」と「説点の打ち方」が,自分で書く文章においてどのように変容するのかについて調査を行っている。結果,調査対象者の大学院生の文章力は高まっていた。また,「1文の長さの平均Jには変容が見られ,「読点の打ち方Jには部分的な変容が確認され,当該大学院生の文体の一部が変容していることが明らかとなった。さらに,インタビューの結果から,当該大学院生は視写を用いた学習方法を行うプロセスで文体に関して様々なことを学んでいることも分かった。
本研究の結果から,現在の教育現場に視写を用いた学習方法を導入することは有効であると考えられる。

理科授業におけるルール学習の促進・抑制要因に関する検討-小5「もののとけ方」の授業分析を通して-
蛯名正司,佐藤誠子,工藤与志文
〔キーワード〕もののとけ方,小学5年生,ルール学習,授業分析,アブダクション
本研究は,小学5年理科「もののとけ方」を対象に,授業におけるルール学習の成立条件を検討したものである。研究では,まず,教科杏の問題点を踏まえ,①複数事例の使用,②ルールの典型性が高い事例の優先的使用,③実験操作とルールとの関連づけという3つの方針に基づいた授業プランを作成し,溶解ルールの理解が促進されるかを事後評価課題により検討した(分析1)。さらに,分析lで得られた結果について,授業過程を分析することにより,授業者の教授活動およびその背僚にある授業者の教材解釈が児童の学習活動にいかなる影響を及ぼしたのかを検討した(分析2)。公立小学校5年生(66名)を対象に授業を実施した結果,授業プランの方針①の有効性は確認できたが,方針②及び③の有効性は確認できなかった。これらの結果について授業過程の分析を行ったところ,①の有効性は授業者による複数事例のカテゴリー化とそれによる推論を促す発問に負うところが大きいことが示唆された。他方,有効性が確認されなかった②③については,実験における定塁的な確認の不十分さや,仮説検証のための実験としての側面の弱さが影響を及ぽしていた可能性が示唆された。