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梶原郁郎
〔キーワード〕生活科,授業内容,酸性の定性的ルール,事前事後質問,WS(ワークシート)
本稿は,酸性の定性的ルール(知識)の獲得・活用を図る生活科の授業内容を提示して,それによる援助と効果を報告している。その内容は,酸っぱさの味覚が困難なものを本時の次の学習対象に予定して,身近なものから酸っぱいと味覚できるものを弁別するルール学習を目標としている。
授業内容の問題1・2・3の授業記録(TABLE 3・4)に基づいて児童のルール獲得の過程が明示されて,問題4・5で児童は梅干やトウガラシ等に対してルールを活用して,それらが十円玉をピカピカにするか予想(思考)できている(TABLE 5・6)。酸味に基づくそうした予想をどの程度の児童ができるようになったのか,この点を事後質問(TABLE 7)で検証している。事後質問1・2では,31名中28名(90%)がルールを獲得して,質問3のABCDでは,25名(81%)が3問以上でルールを活用できた。また質問3のE(塩水問題)では事後も「酸っぱい」と「しょっぱい」との未分化問題が大きく残り,21名(68%)が「酸っぱい-ピカピカになる」と誤答した。以上の成果と課題を事後質問で把握した後,授業後の自宅での酸っぱいものの弁別活動を児童が纏めたWS(ワークシート)によって,本授業および本授業後の課題が整理されている。

石島恵美子
〔キーワード〕講演会,社会参画,社会的交流,郷土料理,高校

本研究の目的は,高校生を対象とした講演会において, 講演会で話を聞くことが好きではない生徒(非好意群)の学びに注目して,教育効果を高めるための有効な手立てを考え,実践し,検討することにある。
講演内容は,地域の郷土料理「つと豆腐」の復興活動を題材として高校生の社会参画意識の向上を目的にしたものである。具体的な講演会の手立ては,社会参画活動の身近な実践者が出演する視聴覚教材の利用と「つと豆腐」の試食体験の導入である。
高校生124名に質問紙による調査を実施し,講演会内容について因子分析を行った結果,「社会参画意識」「社会的交流意識」「つと豆腐に関する意識」の3因子構造が確認された。これらの3つの因子において,好意群,非好意群それぞれの事前事後の2要因で二元配置の分散分析によって分析したところ,両群とも十分な教育効果が得られたことが明らかになった。
身近な実践者が出演する視聴覚教材の利用は,両群において,社会参画意識の向上に有効であることが明らかになった。試食体験は,好意群ではつと豆腐の試食の導入自体,非好意群ではつと豆腐が美味しかったことが,教育効果に影響することが明らかになった。

佐藤誠子、蛯名正司、工藤与志文
〔キーワード〕物の重さ,小学3年生,知識操作,ルール学習,授業分析
本研究は,小学3年理科「物の重さ」を対象に,操作可能なルールの教示が科学法則の初歩的理解に及ぼす影響について検討するものである。授業では一貫して出入りルール(出入りがなければ重さは変わらない)を扱い,その操作により物の出入りを手がかりに重さの変化を予想したり,重さの変化から物の出入りを推測したりする活動が期待された。全10時間のプランを作成し,授業の結果ルールを適用した課題解決が促進されるかを事後評価課題により検討した(分析1)。さらに,授業過程を分析することで授業者の教授活動や教材解釈が学習者の学習活動にいかなる影響を及ぼしたのかを検討した(分析2)。公立小学校3年生37名を対象に授業を実施した結果,授業で扱った課題状況と類似した問題ではルールの適用が促進されたが,授業で直接扱わなかった課題ではそうではなかった。授業過程を分析した結果,授業者の発言はルールの裏操作と対偶操作に集中しており逆操作が欠落していたことが明らかになった。このような知識操作の偏りが「物の出入り」の意味を狭めてしまい,結果的にルールの適用を制限した可能性が示唆された。

石島恵美子
〔キーワード〕模擬授業,教員養成課程,初等,家庭科,大学
模擬授業は,教員としての実践的指導力を育成する効果的な指導法である。しかし,大人数の講座で受講者全員に模擬授業づくりを体験させる実践例は少ない。本研究の目的は,多数回の模擬授業を取り入れた大人数の受講者のいる「初等家庭科教育法研究」の指導法を開発し,実践し,その結果から指導法の効果を分析することであった。その結果,模擬授業を多数回取り入れた本講座は,(1)大半の学生の満足度が高かった。(2)模擬授業を参観することにより「授業を受ける小学生の目線」が芽生え,授業作りの視点が増えた。(3)多数回の模擬授業を通して,実施者と参観者が課題を共有し,質の高い模擬授業を実施することができた。(4)計画・立案・実施・評価を伴う協働的な模擬授業づくりと多数回の模擬授業の参観の経験をとおして,家庭科に関する認識度が向上したことが示された。以上の結果から,多数回の模擬授業を取り入れた指導法は,大人数の初等家庭科教育法研究において教育効果が高いことが示された。

小田切歩 ,渡部優貴
〔キーワード〕算数授業,問題解決学習,グループによるディスカッション活動,説明
本研究では,深い学びを促すための算数授業の改善に向けて,グループによるディスカッション活動を採用した従来の「問題解決学習」の効果を,個人の変化に着目して実証的に検討することを目的とした。小学2年生の算数授業において,算数文章題の問題解決過程を,事前課題-授業(問題解決学習または教師による解説)-事後課題のデザインで検討した。分析の結果,グループによるディスカッション活動においては,児童の説明は十分に促進されなかったものの,全体による問題解決においては,授業課題の解法について根拠の明確さの度合いが異なる様々な説明が行われた。これにより,ワークシートの記述において解法に関する児童個人の説明が促され,それが事後課題における問題解決プランの促進につながったことが示された。しかしながら,単元全体の学習内容を関連づけた,より包括的な説明が十分に促進されなかったため,事後課題における正答の促進には至らなかった。以上のことから,算数授業における問題解決学習の改善に向けて,問題解決学習においてグループ活動を採用する意義を再検討する必要性と,児童の学習レベルを把握した授業デザインの重要性が示唆された。

進藤聡彦,麻柄啓一
〔キーワード〕ルール表象,事例表象,ルールと事例の論理構造
ルールを教示された学習者がルール表象を形成した場合でも,そのルールを事例に適用できないことがある。本研究は,ルール表象を形成した学習者には2つのタイプ(タイプ1とタイプ2)があり,タイプ2の者がルールの適用に失敗することを明らかにした。「銅は電気を通す」という事例とともに「金属は電気を通す」というルールを大学生(N=74)に教え,ルール表象を形成したと考えられる対象者(N=39)を抽出した。このうち18名(62%,タイプ1)は,物質Aが金属であることが示された場合,Aの名前を知っていても知らなくても,「Aは電気を通す」という事例表象を成立させることができた。残り11名(38%,タイプ2)は,名前を知っている金属に即しては,それが電気を通すという事例表象を成立させることができたが,名前を知らないものに即しては事例表象を成立させることができなかった。ルール適用課題では,名前を知っている金属に関しては両者間の成績に差はかったが,名前を知らない金属に関してはタイプ2の成績がタイプ1より低かった。以上の結果は,ルールを広い範囲の事例に適用できるためには,その名前の熟知度(既知か未知か)に拘わらず,事例が等しくルールに支配されていることを学習者が把握しているかどうかが重要であることを示す。本論文ではこの把握のことを「ルールと事例の論理構造理解」と名づけた。

吉國秀人,山内敏男 ,前田浩伸
〔キーワード〕参勤交代,児童,認識,巻物教材,授業
本研究の目的は,江戸時代の政治の仕組みのひとつとして参勤交代という制度を捉え直し,1.参勤交代に関する児童の認識の実態を明らかにすること,2.江戸時代の大名行列を描いた巻物教材の提示と予想活動を取り入れた授業が児童の認識に及ぼす影響について示唆を得ることである。
2つの小学校で6年生を対象に行われた授業実践が検討された。巻物教材を提示したいずれの実践においても,「大名行列内には,行列のリーダーとしての大名が,ひとり存在していること」の認識は,児童にとって必ずしも自明のことではないことが示された。さらに,大名がひとりだけであるという事実を教示すだけでは不十分であり,大名行列全体を俯瞰的視点から捉え,大名行列を立派に見せようと工夫したのはどうしてかを問える手がかりを得ることの重要性が論じられた。
最後に,教育心理学研究という位置づけから言語陰蔽効果との関わりが考察され,また実践研究という位置づけからは,幕藩体制についての知識が教師(第一著者)に不足しているという課題が指摘された。

工藤与志文,小野康直
〔キーワード〕アクティブ・ラーニング,教職実践演習,大学生
本論文は,「教職実践演習」の実践結果の分析から,アクティブ・ラーニングの成立条件について考察したものである。分析対象となった実践は,平成27年度に実施された東北大学における教職実践演習である。アクティブ・ラーニングの成立については,須長(2010)による“activeness”概念の整理を参考にし,主として学生による演習終了後のレポートや感想文に基づいて分析を行った。その結果,当該実践はアクティブ・ラーニングの成功例として評価しうるものであると判断されるとともに,関連する要因として①課題内容の適切性②班員数と班構成③班員以外からのアイディア摂取④自らによる授業実践⑤成長の確信⑥社会的要求の満足が抽出された。最後に,以上の知見を一般化し,アクティブ・ラーニングの成立条件として,①学習者にとって課題の意義が明確であること②課題解決のための知識・技能の一部を学習者が持っていて,それを使用する自由があること③学習課題は学習者たちが各自の知識・技能を提供し合うことで達成されるものであること④課題解決に向けたサポートが存在することが挙げられた。

小田切歩,渡部優貴
〔キーワード〕協同過程,知識の関連づけ,関連性の検討,一次関数,数理的考察
本研究では,中学校の数学授業での協同過程において,解法の関連性の検討を集団的に行うことによる,知識の関連づけの促進について検討した。事象の変化を一次関数によって捉える根拠の明確化に焦点を当て,一次関数を用いた事象の数理的考察に関する問題解決過程を,事前課題-授業(関連性の検討を行う協同過程,妥当性の検討を行う協同過程,教師による関連性の解説の3クラス)-事後課題のデザインで検討した。分析の結果,2つの協同過程ではともに,妥当性の検討による一次関数的変化の根拠の明確化に関するやりとりと,関連性の検討による変化の割合とグラフの傾きの関連に関するやりとりが,それぞれ自発的に行われ,そのような協同過程において,一次関数的変化を前提としていた生徒が,変化の割合とグラフの傾きを事象に即して解釈して関連づける説明構築が促されることで,事象の変化を一次関数によって捉える根拠を明確化するようになるという変化がみられた。さらに,関連性の検討では,もともと変化の割合やグラフの傾きを解釈できていなかった生徒が,解釈できるようになるという変化もみられ,協同過程における解法の関連性の検討の有効性が示唆された。

小田切歩,渡部優貴
〔キーワード〕協同学習,理解深化,考えの整合化,説明,分数
本研究では,グループでの話し合いの後に全体交流を行う算数授業での協同学習において,児童が正誤両解法の比較と説明を行うことによる,児童個人の理解深化プロセスを検討した。小学2年算数の「分数」の単元において,日常的な知識を活かして解決可能な,分数の和に関する問題解決過程を,事前課題-授業(協同学習)-事後課題のデザインで検討した。分析の結果,グループ活動後に全体交流を行う協同学習について,以下の3点が示された。①協同学習を通じて,分数に関する児童個人の理解が促進される。②協同学習において,児童個人の分数に関する自分の考えが整合化される。③分数の和に関して,児童個人の自分の考えが整合化されることにより,個人の理解が促進される。さらに,各活動における児童の説明の特徴として,グループでの話し合いでは,児童の説明が十分に精緻化されないことがあるものの,その集団的な説明の変化が個人の説明の変化に直接的に影響すること,一方で,全体交流では,教師の支援により児童の説明の精緻化が促されるものの,その集団的な説明の精緻化が個人の説明構築に与える影響は,児童の既有知識により異なる可能性が高いことが示唆された。