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歴史における学習者の誤った認識を修正する象徴事例の条件

進藤聡彦,麻柄啓一
言語教材は一般に「pならば(は)qだ」という命題の形で書くことができる。前件pを具体化した事例は代入例と呼ばれてきた。先に著者たちは命題の後件「qである」を具体化することによって別のタイプの事例を作ることができることを示し、これを象徴事例と名づけた。どのような条件を満たす象徴事例が命題の学習に有効であるかを明らかにすることは重要な仕事となる。本研究では明治時代に関するある陳述命題について3つの象徴事例を準備した。学習セッションでは大学生の3グループに象徴事例を1つずつ提示して、その後に事後テストを行った。この問題では多くの学習者が誤った認識に基づいて答えるため間違うことがすでに確認されているが、象徴事例を用いれば正解を出すことができる問題であった。われわれはさらに、象徴事例を参考にして答えたか否か、また参考にしなかった場合はそれはなぜかを質問した。その結果、何人かの学習者は象徴事例に関してわれわれの期待とは異なる解釈をしていることが明らかとなった。また別の何人かは提示された象徴事例を認知構造の中にうまく取り入れることができないので無視してしまうことが明らかとなった。逆に言うと、このような「無視」や「別解釈」が生じない象徴事例が有効であることが明らかとなった。第2実験では2つの象徴事例を同時に学習者に提示することの効果を検討した。その結果、この方法は学習者の誤った認識を修正するのに非常に有効であることが確認された。